7・聖夜の囁き
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 カノン・フェイスネットの人生にとって、クリスマスという行事は特に大きなイベントではなかった。
 宗派の違う行事は彼女の思想そのものに大した影響もなく、ただただ、興奮と緊張を好む彼女の性癖が、大きな物音を捕らえた猫の耳がそうなるように、ピクンと反応してはすぐ日常の退屈に紛れて伏せられていく、そんな一時の楽しみでしかなかった。
 長い年月を旅で過ごした彼女にとって、一つの神話とそれに基づいた行事を数多く目にした結果、クリスマスというのは特別でもなんでもなく、多くの土地で開催される祭りであって、それも各地によって祝い方が違っており、その名称の統一と規模の大きさという二点に置いてのみ活目させられるものでしかなかった。さらに気になった事があるとすれば、自分とは違った『神の子』と呼ばれる男の出生と生き様を、人々がどのように捕らえていてどのように祝っているのかということぐらいだろうか。もちろんそれは彼女の中のほんの些細な興味の一端でしかなく、概ね彼女は退屈な闘病生活を少しでも楽しくさせる為、例年よりは積極的にこの行事を取り上げているに過ぎなかった。
 入院中の彼女の病室には、様々な人々がやってきてはプレゼントや花束を飾って行った。住んでいるマンションの人々はいうに及ばず、どこで友達になりどこから聞きつけてきたのかわからない商店街のおばさんから浮浪者のおじいさんまで、それぞれがそれぞれなりのプレゼントを持参しては、カノンの喜びの喚声に笑顔を見せた。
 彼女と特に縁のある、母親の弟子達からもプレゼントが届けられた。病院長であるリリ・レイランは大きなクリスマスツリーを運び込み、ムー・ムスラ・テレスはキラキラ輝く真珠色のポシェットを、カガミマ・ユキチは赤と錦糸に彩られた派手な東国服を魔除けの意味を込めて届け、パエラ・ルウマプルからは柔らかなガウンと厚手のタオルといった病院生活の必需品が赤い包装紙に包まって到着した。几帳面なユガリ・スースーエンラからは「宗派が違うので『くりすます』とやらそのものを祝う事はできないが、歓喜に集う人々の幸福を願う」だとか「カノンのことだから、この寒い季節に裸で遊んでいやしないかと心配だ」だとか「我等が神ティル・ガルエンの降臨する未来まで君の未来を一番に案じている」だとか、とにかく長いクリスマスカードというかレターが届き、中にはテア民の人々が祝い事に用いるマツツルの枝葉が封じられていた。
 彼女の看護人として病室に寝泊りしているトレイル・トリルアーガスは、サンタの衣装が欲しいとわめく彼女の為に、様々なサイズのサンタ服を探しまわるはめになった。カノンは視覚情報から身につける衣装を体表面に出現させる事が出来るはずなのだが、曰く「プレゼントしてもらう事に意義があるの! 自分で作るより、他人の気持ちの方が大事なのよ!」と握りこぶしを固めて力説してくる少女の形相に反論の言葉を失った。少女としての彼女以外にも、大人としてのカノンの姿や少年としての体の分も、老人態のサイズまで注文され、トレイルは先にクリスマスツリーを運んだレイランを恨んだ。本来は花屋である彼が贈るに相応しいのは、サンタの衣装なんかよりツリーであろうと考えたからだ。だが悲しいかな、最も年下であり最も未熟な魔術師である彼に出来るのは、陽気に点滅する電飾をぶら下げたツリーを横目に衣装を探して街へ飛び出す事ぐらいだったのである。

 そんなプレゼントに囲まれた深夜、カノンは赤や緑に彩られた病室のベッドに横たわっていた。
 トレイルは衝立の向こうの長椅子で眠っていた。ギリギリまで各サイズの衣装を――それもなるべく安いものにならないよう探し回ったので、疲れ果てていたらしい。時々うなされたような小さな声を出す以外、前後不覚といった様子だ。
 カノンは眠れぬまま、腹を立てていた。
 真っ先にやって来なければならない人間が、日付も変わろうかという深夜になっても現れない。
 もう真夜中だから来れないのだろうかと、カノンは更に苛立ちをつのらせる。真夜中だから訪問できないというならば、夜が来る前に訪れるべきだったのだ。
 瞼を閉じ、彼女は思う。いるはずのないサンタクロースと、それを心待ちにする子供たちの姿。恋人たちの睦言。寒空の下で震えながらも祝い酒を交わす男たち。暖炉の火を絶やさぬよう見守る女達の噂話。仕事に追われながらその中に祝日の楽しみを見出そうとする人々やその帰りを待っている人々、子供たち。教会の特別ミサで祈りをささげ頭をたれる敬虔なるクリスチャンの群れ。
 光が瞼の裏で舞い、カノンは涙ぐんだ。
 彼女も祝福を授けたかった。祝福を受けたかった。
 でもそれはかなわない願いだった。彼女はまだ神ではなく、人々を幸せにする力もなく、最も手に入れたいものも手に入れられず、何よりもさびしくて誰かと共にあの光輝く世界に立つ事が想像できなかった。
 病室に閉じ込められたまま、もうどこにも行けないような気がしていた。
 瞼の裏には、真っ白な雲海が新たに浮かび上がった。真っ青な空と、目を傷めるほどの陽光。飛行船のバランサーによって地上と変わらぬまま生活していたあの頃。母はおろか仲間にも見捨てられ人々に追われたクラシスが、傷心のあまり放心したまま空に幽閉されていたあの頃。会話らしい会話を交わせぬまま過ごした年月。あの頃もカノンは、このままクラシスは立ち直れず飛行船の中からどこにも行けなくなるのではないかと不安になったものだ。
 でもとカノンは息をついた。
 大丈夫。なぜなら自分は『道化師』なのだから。もうしばらくすれば、この状況を打破するべく行動する時が来る。自分がこの場にいるだけで、因果律が書き換えられているはず。この気分の落ち込みは、自分が人間らしく行動し思考しすぎたせいなのだ。自分はもっと、怠惰であり行動的であり、必ず失敗し成功するべきなのだ。心身が『道化師』から離れているから、その存在因子がきちんと発動していないのだ。新たな展開を引き寄せる力が発揮されていないのだ。
 カノンは笑みを作った。頭の中で様々な言語による罵詈雑言を並びたて、船長と呼ばれる男が次に顔を見せた時に聞かせる為一番卑猥な悪口を選び出そうとした。紳士ぶって取り澄ました顔が嫌そうに歪むのを想像すると、ほんの少しだけ気が晴れた。
 いつもどおりの気分転換だった。彼というはけ口をもって彼女は彼女自身の役割を自覚できた。
 道化は、誰かに蔑まれ誰かを罵倒しそして誰かに笑われてこその道化なのだ。相手がいなければ道化は存在できない。
 カノンにとってクラシスという男は、いつでも自分の相手になってくれる他者であり、常に自分の側にいるべき存在なのだ。



 意識が混濁するという感覚を、カノンは数度経験した事がある。いずれも発作によって倒れた時の事だ。自律神経失調症の一種と判断されているが、自分の体の自由がきかなくなり、呼吸不全に陥ったのだ。各種の情報がカノンの脳裏を支配し、様々な情報で埋め尽くされた意識はどこを捉えてどうするべきなのかという簡単な事すら出来ないほどカノンの全てを狂わせ、身体能力を緊急停止させようとした。
 神の子であるカノンにとって、おそらく死は存在しない。別の形でこの世に存在し続けるだろうと予測されている。だが、今ここでカノンという少女を形作る思考パターンは消滅し、同じの記憶を持ってはいても元通りのカノンと同じ行動を取るとは限らないだろうと思われていた。同じ経験を重ねても、同じ実感を持っていたとしても、そこで取り入れるパターンが同一となるとは限らないからだ。
 それは、カノンにとって死と同意義である。
 特にあの『イレギュラーな事件』を経験した自分と、それを記憶の一片としてしか意識できない自分とでは、考え方が大きくずれてしまうだろう。母への憎悪と父への畏怖が、あの男への思慕が、どれだけ変化するかという恐れがカノンの一番の懸念事項であった。
 そんな意識の混濁が死に直結する彼女にとって、睡眠とは意識を内面に閉鎖する行動ではない。外部の情報を自らの体内情報に反映させず処理するという行動に過ぎない。音は聞こえたという事実を反転させ、聞こえなかったことにする。見えた事は見えなかった事にし、臭いは嗅いだ事実を反転させられる。
 彼女は『ずっと起きている』のだが、睡眠という擬似的な行動様式を取っているに過ぎないのだ。もちろん、それが人間と同じように体内調整と体力回復に役立つという事は一緒ではあるが、彼女はいつでも覚醒時最高潮の行動レベルで動き出すことが出来た。

 だからその瞬間――かすかな物音が病室の沈黙を振るわせた時、彼女は即座に外部情報の反転行動を停止し、冷静に対処方法を探った。いつも身に着けている小さな投げナイフは入院時に取り上げられ、体に悪いからと魔術の発動を禁じられている身には最悪の事態まで術を使う事をためらわせた。
 彼女の捕らえた窓辺の物音は、今や大きな響きとなって窓枠を揺らしていた。金具をガチャガチャと言わせる音が響き、時折低い息遣いと舌打ちが聞こえた。
 カノンは自分の体を変化させることを選択した。基本態である少女態では、相手が暴力を振るってきた時に対処できないと考えたのだ。少し体に負荷がかかる事はしかたが無いとして、カノンは六百年前に見た屈強な大男の情報を引き出した。腕はカノンの腰まわりより太く、猫背の背でも二メートル近いクラシスを見下ろすほど大きく、いつでもしかめられているかのように見えた表情や密集した胸毛や腕毛の容姿は、人間というより野生動物の方がしっくりくる。
 カノンの美意識の一部は、このゴリラも驚くような男を驚嘆と喜びと好意を持って迎え入れていた。相反するものを抱える道化の感覚は、清潔で華やかさを好む少女趣味の感覚も野蛮で汚らしい悪趣味の感覚も同時に喚起させていたのだ。
 カノンは身体情報を書き換える。一度本来の姿である銀色の不定形生物へ戻り、そこから屈強な大男へと体を組み上げる。
 猫背が過ぎて曲がった背骨と無駄なほど張り詰めた筋肉によって圧迫された肺を動かし、カノンはゼェゼェと喘息のような息をついた。
 やがて、窓の鍵は金具の重々しい音を立てて外れた。大きく開け放たれた窓辺にぬっと体を滑り込ませた不審人物を一目見た瞬間――吹き込んできた外の寒気に揺れるニ房の前髪を確認した途端、カノンは笑い出しそうな自分を押さえて、急いで自分の体を少女態に戻した。
 鈍感と評判の男は、カノンの変化解除の瞬間生じたかすかな魔術の気配に気づかなかったようだ。目を閉じてはいるが、外部の情報を最大限に拾い上げて再構成している今のカノンには、相手のわずかな動きによって生じる空気の対流からも正確に行動を把握することができた。寒さに震えながら窓を閉め、眉間をけわしく歪めたままどうしようかと腕組みする長身の男の姿までも、手に取るように理解できた。
 彼は、赤い燕尾服を纏っていた。頭には申し訳なさげに潰れた赤い三角帽子。まるで三流の手品師の様相だったが、上等な生地と体にぴったりな寸法は、どこまでも大真面目に作らせた衣装である事を悟らせた。抱えている花束は、トレイルから取り寄せたのだろう、今いる大陸では繁殖できない類の花々で大きく膨れ上がり、ツリーの電飾に色とりどりの陰を生み出して揺れていた。
 カノンもトレイルも眠っていると判断したのだろうか。彼は花束の裏に隠していたワインの壜を取り出し、なるべく音を立てまいと四苦八苦しながらコルクを抜いた。一度グラスを探してキョロキョロと病室を見渡したが、諦めて壜を直接唇に押し当てた。
 窓辺の壁にもたれて、男は喇叭を吹くように壜の中身を喉に流し込む。
 無言でなんども中身をあおり、瞬く間に半分を飲み干した彼は、しっかりした足取りで横たわるカノンに近づいた。覆いかぶさるように顔を覗き込む。
 飲んだばかりの葡萄酒の香りが鼻をつんと刺激し、カノンはそっと眉をひそめた。だから
「カノン」
 一瞬、起きている事を悟られたかと思った。
「メリークリスマス」
 温かなその感触が何なのか判断するまで、カノンの思考は一瞬停止した。いや、停止させられた。人間としてのカノンが、未熟な神としてのカノンの行動様式を一時的に停止させたのだ。
 重ねられた唇から、赤紫色の液体の軽い刺激が伝わってきた。
 驚くカノンが自分の驚きを自覚する前に、彼は唇を離すとカノンの頬に自分の頬を押し当てた。冷たいのか温かいのかわからないその温度に、カノンは身を強張らせる。
 そして耳朶に触れる吐息。
「絶対に死なせやしない」
 痛々しいほど真剣な囁きを声にならない声で呟いた男は、すぐに顔をあげると、抱えたままだった花束をツリーの側に置いた。ついでに、もう一度ワインの壜をあおり、一気に空にする。
 コトンと床に空き瓶を置き、一度だけ彼は病室を見回した。薄紫の瞳が、気づいてもらいたい期待と気づかれたくない恐怖に挟まれ、悲しそうに揺れていた。
 そして、自分が押し入って来た窓をもう一度開く。つかの間の感慨を振り切り、彼はいつもの軽薄そうな笑みを浮かべて寒空を見上げた。来た時と同じように、半身を窓から乗り出し――

 我慢の限界だった。

 ベッドの上に起き上がって、カノンは腹の底から叫んだ。
「クラシスッ!」
 驚いた猫のように、大きな体が跳びあがって窓枠に激突した。
「か、か、か……カノ、ン!? 起きて、起きてるのか?」
 腰の痛みなのか驚愕なのかわからないが、クラシスは腰を押さえて引きつった笑みと言葉をもらした。
「馬鹿じゃないの、アンタ? なに、その格好? サンタのつもり? くだらないわね、ストリップのネェチャンのパンツより悪趣味じゃないの。スパンコールが付いてるパンツ一本の方がまだ見栄えがするわよ。さっさといつもの服に着替えなさい、ボケガラス」
 一生懸命考えていた罵詈雑言が台無しだ。嬉しいのか悲しいのかわからないまま、カノンはベッドから飛び降りてクラシスに駆け寄った。
「ほら、さっさと抱っこして! 床が冷たいの!」
「あ、ああ。あ?」
 目を白黒させながらカノンを抱えあげたクラシスは、カノンと目を合わせた途端頬を真っ赤にさせた。
「……なに赤くなってんのよ。今年の発情期は十月ごろに終わったんじゃないの?」
「いや、僕は別にそんなつもりは――」
「なんでお見舞いに来てくれないの? ううん、言わなくてもわかってるって。自分のせいだとでも思ってるんでしょ? 全く、もう! 本当に単純なんだから!」
「い、いや、本当にそんなつもりは……本当に忙しくて、クリスマスシーズンは稼ぎ時で――」
「その割りにはユキチと飲み歩いていたみたいじゃない? 毎日ユキチを酔い潰すのやめてくれない? トレイルが毎日迎えに行ってたのよ?」
 クラシスが舌打ちしながら顔を背けた。
「ちょっと! 何よ、その拗ねた子供みたいな顔は!」
「別に。拗ねちゃいないよ」
「じゃあ、ちゃんと私の顔を見・な・さ・い・よッ!」
 しがみついていた首を締め上げると、慌てて向き直る。
 苦しかったのか、真っ赤だった顔が更に真っ赤になって、心なしか怒っているように見えた。
「あのね、クラシス――」
「もったいぶらずさっさと言いなさい、首絞めてまで僕に聞かせたかった事とやらをな!」
「うるさいわね、言われなくても言うわよ! ありがとうって言いたかったの、サンタさんに!」
 クラシスの目が大きく見開かれ、空ろになった。紅潮した頬は色を更に深め、カノンを抱きかかえていた腕には更に力が加えられ、カノンの幼い体を苦しいほど抱きしめた。
「痛ッ、痛いってば! 離して!」
「ああ、ごめん」
「ほら、さっさとプレゼント渡しなさいよ! あんたサンタクロースなんでしょ?」
「後で」
「後っていつよ」
「後で」
「だからいつだってば!」



 トレイル・トリルアーガスは目の前で歯軋りするカノンを前に、朝食のトレイを抱えてため息をついた。
「で?」
「だから、言った通りよ! あのバカガラス、そのまま帰っちゃったのよ!」
「プレゼントも無しで?」
「そう! 持ってきたの、あの花束だけなのよ!」
 怒髪天をつく勢いで握りこぶしをベッドのフレームに叩きつける少女に、トレイルは朝食のスープをすくったスプーンを差し出す。
「でも……まあ、あれだけでも十分高価なんだから……僕も用意するの大変だったんだから」
 サンタクロースの衣装だけでも大変だったのにという愚痴は胸に閉まっておく。
 パクンとスプーンを加えてスープを飲み込んだカノンは、フンと鼻を鳴らした。
「わかってるわよ、あれがどれぐらいの価値なのかぐらいは。全部、花言葉が幸福にまつわるものばかりだしね。あのワインだって、当たり年のバルルミュ。シンリュウ大陸だったら最高級品だし」
「へぇ、知ってたんだ」
「私はカノンよ、馬鹿にしないで……って、あのワイン、一人で飲んでたじゃない! ずるいわよ、大馬鹿ガラスッ!」
 彼女は怒鳴ると更に苛立ちがつのったのか、もどかしいから貸しなさいよとトレイルの抱えていたトレイを奪って自ら食べ始めた。いつも食べ始める時は面倒がってトレイルに食べさせるクセに、途中から自分で食べ始めるのだ。
 トレイルはため息をついて、自分が飲む朝のハーブティを用意する為席を立った。職業柄朝の早い彼は、自分で調達した朝食をとっくに食べ終えていた。湯を沸かしながら、彼は腕組みで考え込む。
 さて。言うべきか言わざるべきか。
 クラシス・ホワイトムーンの渡しそびれたプレゼント。
 結局、渡せなかったんだと、トレイルは一人苦笑する。


 白いウエディングドレス。


 お年頃になるまで、嫁に出すまで絶対に死なせやしないという意味らしいが……トレイルとユキチは顔を見合わせて心配したものだ。カノンが『その気』になりはしないかと。
 どうしても、クラシスとカノンは互いへの考え方がずれているとしか思えない。
 いや、それよりも折角のウエディングドレスが、この先いつ渡されるのか気になる。無精者のクラシスの事だ、渡すタイミングを失った今、仕舞いこまれたままタンスのコヤシになるのがオチだろうが。
「でも、クリスマスプレゼントに用意するもんじゃないよねぇ……」
「トレイル、私に何か言った?」
「なんでもないよ」
 まだ苛立っている彼女の為に、トレイルはもう一つティーカップを用意した。


 〈「聖夜の囁き」・了〉




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